焼酎好きなら、いつか一度は訪れたい 鹿児島・南さつまの「竹屋神社」

日本人の多くは無宗教だと言われています。でも神様に願いごとをしたり感謝したことは、誰にだってあるんじゃないでしょうか。古くから日本では、春には豊作を願い、秋の収穫を祝い、その米で醸した酒を神に捧げてきました。その酒のできの良し悪しさえも、すべて神のオボシメシとされてきたのです。

 

酒造りの神様として著名なのは、京都の松尾大社。境内には奉納された酒樽が山のように積まれています。同じく京都の梅宮神社は、酒神である酒解神(サケトケノカミ)と酒解子(サケトケノミコ)を祀る神社。奈良・三輪の大神(おおみわ)神社は日本最古の神社とされ、新酒ができたときに蔵元が軒に吊るす杉玉は三輪山の杉の木で作られたのだとか。

 

しかし、松尾さんも梅宮さんも大神さんも清酒にまつわる神社で、焼酎との関係は見られません。それでは、焼酎の神様はいらっしゃらないのか? と調べていくと、おはしました。鹿児島県は南さつま市、薩摩半島の西端に位置する「竹屋神社」には焼酎の神様が祀られているのです。

竹屋神社の総代である宮ヶ谷静夫さんにお話をうかがい、竹屋神社にまつわる資料をいただいたので紹介しましょう。古事記(712年)や日本書紀(720年)に書かれている神話です。

 

昔々、天照大神(アマテラスオオミカミ)は、地上の国を治めるよう孫の瓊瓊杵命(ニニギノミコト)を遣わしました。高千穂の峰に降り立った瓊瓊杵命は、やがて笠沙之御前(現・野間岬)に到達し、そこで美しい娘を見初めます。酒造りの神である大山祇神(オオヤマツミノカミ)の次女・木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)です。ふたりは結婚し、舞敷野(もしきの)に日本初の皇居となる笠沙宮を構えました。

 

ところが木花咲耶姫は、一夜で身ごもったことから疑いをかけられてしまいます。それを晴らすために「あなた様の子なら火に焼かれることはないはず」と密閉された産屋に自ら火を放ち、燃え盛る火の中で3人の皇子を産んだのです。

 

最初に生まれたのが「火明命(ホアカリノミコト)」別名「火照命(ホデリノミコト)」

次が「火蘭降命(ホスセリノミコト)」または「火須勢理命(ホスセリノミコト)」

最後が「彦火火出見命(ヒコホホデミノミコト)」別名「火折命(ホオリノミコト)」

古事記と日本書紀では名前の表記が異なるのですが、みんな名前に「火」が入っています。

 

密閉された産屋の中が燃え盛る様は、蒸留器の中でもろみが蒸される姿を思わせます。そこから生まれた三柱の神は、焼酎の蒸留の初留・中留・後留と考えられ、蒸留技術が日本に伝わるずっと前に、神話の中には蒸留が隠喩となって表現されていたというわけです。

このことから三柱は焼酎の神様とされ、のちに彦火火出見命の妻となった「豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)」を加えた四柱が、ここ竹屋神社には祀られています。

 

ところでみなさん、海彦と山彦の話を聞いたことはありますか? 釣りが得意な海彦(海幸彦)は、じつは焼酎神の長男・火明命のニックネームで、狩猟が得意な山彦(山幸彦)は、三男の彦火火出見命のニックネームなのです。

 

ある日ふたりは互いの道具を交換して出かけましたが、山幸彦は大事な釣針をなくしてしまい、兄の逆鱗に触れます。どんなに謝っても許してもらえないので、とうとう海宮(わだつみのみや)を訪れ、海神の助けを借りることにしました。そこで出会ったのが海神の娘で、のちに妻になる海宮の神様・豊玉姫だったというストーリーです。

 

海神は「渡す」ことを司り、わだつみとは渡ってくることを意味します。蒸留技術やサツマイモ、黒麹などが海を渡って伝来することがなかったら、焼酎は生まれていなかったのですから、焼酎の誕生には豊玉姫命の力が大きく関わっていたわけです。

 

竹屋神社を訪れると、その佇まいに長い歴史を感じさせられることでしょう。もともとは瓊瓊杵命が笠沙の宮を建てた舞敷野にあったものを、3皇子の居住地であった宮原の皇居跡に移したもので、建立は約1000年前と言われているのだとか。

 

彦火火出見命と豊玉姫命を祀る中央本宮。火蘭降命を祀る東宮。火明命を祀る西宮。3つの社からなり、境内裏の丘の上には、主祭神である彦火火出見命の御陵と伝えられている「磐境(いわさか)」があり、神が眠る聖地として神秘的な雰囲気が漂っています。

竹屋神社では、日本唯一の焼酎神社として、毎年、焼酎神を奉斎する式典「焼酎神祭礼(しょつがんさあ)」が催されます。神事だけでなく、たくさんの蔵元から集結した100銘柄以上の焼酎を飲み比べすることができたり、焼酎蔵見学バスツアーなども企画され、楽しみもたっぷり。2020年は8月8日(土)の予定とのことです。

 

そして、このたび田苑酒造から、樽貯蔵米焼酎『田苑 プラチナ』が新発売されます。そのラベルは四柱の焼酎神および米の神の神器をモチーフにデザインされていて、焼酎と神様の関係がうかがわれます。

 

ともあれ、今夜もおいしい焼酎が飲めることを神に感謝。そして、明日もおいしい焼酎が飲めることを願いましょう。

取材協力・写真提供
竹屋神社総代/宮ヶ谷静夫氏

竹屋神社
鹿児島県南さつま市加世田宮原2360

 

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