私が経験して感じた音の本当の力は、言葉よりも伝わることだった

プロフィール
林 千夏子(はやし ちかこ)さん
山梨県出身。フルートを中心にケーナ、篠笛などの笛を専門に演奏する。ラテン音楽をベースに、現在アーティストのサポート演奏やソロ演奏を精力的に行っている。

 
まだ眠たい朝の通勤時に明るい音楽を聴くと目が覚めたり、就寝時に癒しの音楽を聴くと眠くなったり……そのような経験はありませんか?
 
私たちはいつも知らず知らずのうちに、音から力を貰っているように思えます。フルート演奏者の林千夏子さんに日常に溢れる「音」が持つ力についてお伺いしました!

 

演奏者として伝えたいことをその都度、考える

私はフルートを中心とした音楽活動をしています。現在はシンガー、バンドなどのアーティストの皆さんからお声がけをしていただきながら、バックミュージシャンをメインにしています。

主にフルートを演奏していますが、現在は日本の伝統的な篠笛や南米ペルー・ボリビアの楽器であるケーナという、どれもフルートのような笛楽器も使っています。
フルートより伝統的で歴史が深い篠笛やケーナはシンプルな楽器である分、音に温かみがありますね。

演奏者として演奏前に考えていることは、来てくれている会場のお客さんにどのようなことを伝えたいかです。会場が違えばお客さんも違うので、1つ1つの会場によって臨む気持ちを変えていますし、私が奏でた音楽を聴いたお客さんが次の日からまた頑張ろうと思ってくれたら嬉しいなと思いながら演奏しています。

音楽は言葉以上に瞬時に心を動かす力がある

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音楽は人の感情を動かす力もあると思っています。音によって人間は気持ちをコントロールできるし引っ張ってもくれます。
音楽は言葉以上に瞬時に心により深く、相手の心を動かす力もあるのではないでしょうか。

例えば、気持ちが落ち込んでいる時は明るい曲よりも、暗い曲を聴いて思いっきり悲しみに浸る。そこで気持ちをさらに大きくしてたくさん泣いて、その後に人をスカッとさせたり。そんな力があると思います。

田苑酒造でかかる曲は心が明るくなる曲。1つの楽器でも全く味わいの違う音・表情・色を出せる

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人への影響力はとても計り知れないものがありますが、それは物にも言えるかなって思います。例えば、田苑酒造さんがクラシックを聴かせながらお酒を育てていることと同じかもしれません。

田苑酒造さんでかかっているクラシック音楽に共通するのは、心が明るくなる曲。他にもかけるとしたら、ヨハン・シュトラウスの「美しき青きドナウ」やチャイコフスキーのくるみ割り人形の「花のワルツ」がぴったりかもしれません。

私は大学まではクラシック音楽のフルートを演奏していました。その中ではフルートは響きがあり輝きのある音が「良し」とされていました。でも、今行っているジャズなどの音楽はタンギングからまず違っていて、クラシック音楽にはないテクニックで出す音が「良し」とされています。

同じ楽器でも全く味わいが違う音が出せることを最近になって感じました。演奏者によって同じフルートでも音の違いが出せること、表現の幅や色の違いが出せることが面白いなと思いますね。

私の心に響いたラテン音楽。実体験が音楽の幅を広げてくれた

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ジャズなどクラシックに留まらない演奏もしていますが、特に最近はラテン音楽に挑戦しています。それには理由があって、ある日、疲れて帰っていた時に民族音楽を演奏する路上ライブに出会いました。その演奏を聴いた瞬間にその音が体に染み渡る感覚になったのです。それこそがラテン音楽でした。

そこから私は中南米の音楽が心に染みることが分かって、民族音楽に興味を持つようになりました。
ラテン音楽ってボサノヴァやサルサなど音楽のジャンルが幅広いです。今はラテン音楽を私のフルートに活かしていきたいなと思っています。ラテン特有の賑やかな音楽の中にフルートの綺麗な音が混ざっていく。ラテン自由な音楽がとても面白いと感じています。

テクニックではない人間らしさを感じられるものが「良い音」

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ラテン音楽の体験をしてから、私は良い音について考えるようになりました。私が思う良い音は、その人にしかない魅力や個性、人間らしさが感じられるもの。人間らしさから感動から温かい気持ちを生み出してくれるのはないでしょうか。

良い音はテクニックではない、人の心が垣間見えた瞬間に感じられるものだと思います。その時に人は感動を覚えるもの。そう考えると、言葉ではうまく伝えられないものを届けられることが音楽にはできる力があると思います。

例えば、ある演奏者がこれまで多くの悲しいことや悔しいことの経験をしてきたなら、演奏を聴くお客さんには幸せになってほしいといった感情を音に乗せて届けることができます。やはり、音楽は言葉以上に瞬時に心により深く、相手の心を動かす力があるのではないでしょうか。

前向きになれない人にも音楽がシンプルに何かを届けられる

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私にも教会で演奏した際に似た経験がありました。礼拝の後に聴きに来てくれたお客様から演奏後に、感謝の言葉をかけていただきました。その時に演奏者として音を出す意味を感じましたね。

祈りを捧げる教会では辛いことがあった人や前向きになれない人もいます。そのような人たちに直接、声をかけることは難しいけれど、演奏をしたことで分かりました。やっぱり言葉ではなく音楽はシンプルに人に何を届けられるものなんだと感じます。

私たちが日頃から聴いている音楽も街に流れている音も私たちの耳に届けられます。音や音楽があるからこそ、私たちは心を勇気付けられたり物に対しては良い影響を与えてくれます。
日常生活において切り離せないからこそ、音の大切さを改めて知ることができたと思います。

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