罰ゲームで飲むなんてもうよそう。「テキーラ」は、おいしい酒なのだ!

Facebookの創始者を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』。主人公たちが祝杯をあげていた酒は、シャンパンではなくテキーラだった。欧米では今、テキーラはセレブの酒で、ハリウッド俳優やミュージシャンにも愛飲家が多く、プレミアムテキーラと呼ばれているのだという。

 

イメージが違う。テキーラといえば、もっとやんちゃで、悪ふざけの酒だったのに。みんなで一気飲みしてテンション上げるとか。罰ゲームで無理やり飲まされてゲホゲホむせてるヤツをおもしろがったり。おいしいと思って飲んだことはなかったかもしれない。

 

テキーラ(tequila)はメキシコ産の蒸留酒だ。でもメキシコ産の蒸留酒のすべてがテキーラなのではない。テキーラ以前からメキシコにはメスカル(mezcal)という蒸留酒があり、そのなかの特別なものがテキーラと呼ばれるようになった。シャンパーニュ地方で造られたものだけがシャンパンと呼ばれるのと同じ、原産地呼称という認定である。

 

テキーラもメスカルも、原料はアガヴェ(agave)というアロエに似た多肉植物。品種は100以上あって、鋭く尖った細長い葉が大地から半球状に大きく広がっているのが特徴だ。メキシコではマゲイ(maguey)と呼ばれ、日本語では竜舌蘭(リュウゼツラン)と訳されている。テキーラの原料をサボテンとする説があるが、あれは完全な間違い。どうしてそうなったんだろうか?(笑)

 

テキーラの条件。まず第一に、原料のアガヴェはメキシコの特定地域で栽培されたブルーアガヴェ(アガヴェ・アスール・テキラーナ)という品種だけで、これを51%以上使ってなければならない。特定地域とはハリスコ州、ガアナファート州、タマウリパス州、ナヤリ州、ミチョアカン州の5州である。

 

メキシコでの伝統的な飲み方は、カバジートと呼ばれる縦長のショットグラスにテキーラを注ぎ、ライムと塩を用意。櫛切りにしたライムをかじってテキーラを流し込み、親指と人差し指の又に置いた塩を舐めるのだとか。確かにライムとの相性はいいようけど、メキシコはライム・レモンの生産量が世界2位でもあるのだ。

さて、そんなテキーラが世界的になったのは戦後のこと。1949年にテキーラベースのカクテル『マルガリータ』が全米カクテルコンテストで入選し、58年にはラテン系ロックグループTHE CHAMPSの『Tequila』が全米チャートを賑わした。そして68年のメキシコ五輪でメキシコ文化が全世界に発信されると、テキーラの輸出量も増えていく。

 

72年には、ローリング・ストーンズのメキシコ公演があり、ミック・ジャガーがカクテル『テキーラ・サンライズ』にハマッタという情報が駆け巡る。さらに翌年、イーグルスのセカンドアルバムがリリースされ、シングルカットされたのは『テキーラ・サンライズ』という曲。こうして、テキーラはいよいよ世界のスピリッツとして知られるようになっていったのだ。

 

では、一気飲みイメージのテキーラがセレブな酒になったのはどうしてなのか。まずは、そのセレブなテキーラとやらを飲んでみなきゃとBAR蜜柑を訪ね、テキーラ・マエストロの原田氏に話を聞いた。

 

「プレミアムテキーラと呼ばれているのは、100%アガヴェのテキーラです」と脚付きのチューリップ型グラスに、淡い金色の液体が注がれた。ツンとする刺激臭はまったくなく、ほんのり甘い香り。口あたりはまろやかで、ラムとは違う甘みがじゅわっと広がっていく。これは、おいしい。記憶にあるテキーラとはぜんぜん違うものだ。


「ブルーアガヴェを51%以上使うのがテキーラの規定ですが、残り49%に糖蜜などを加えた『ミックス』と100%ブルーアガヴェだけの『100% De Agave』の2種類があります」と原田氏。

 

ショットであおったり、ジンジャエールを加えてバーカウンターに叩きつけて泡立たせたりしていたのは、もちろん前者だ。プレミアムテキーラでそんなことをする人はまずいない。もったいないからではなく、テキーラの本当のおいしさを味わうのに適した飲み方ではないからだ。

 

酒となる原料の多くは毎年収穫することができるが、アガヴェはそうはいかない。用いるのは糖分をたっぷり蓄えた球茎部で、直径70〜80cm、40kg前後まで肥大させるのが理想。そのため最低でも6年、10年以上かけて育てることもあるという。

 

収穫は手作業。ひと株ずつ専用の農具で葉を切り落として、『ピニャ(パイナップルの意)』と呼ばれる球茎だけにしていく。

 

ピニャを蒸す→粉砕・搾汁→発酵→単式蒸留器で2回以上蒸留して、アルコール度数50%台の原酒ができる。樽による貯蔵熟成の有無や期間によってタイプが分かれる。

 

ブランコ…樽熟成なしまたは60日以内の樽熟成。無色透明でカクテルにも最適。

 

レポサド…樽熟成2カ月以上1年以内。淡い金色で、最初に飲んだのがこれ。

 

アニェホ…1年以上の樽熟成。3年以上樽熟成したのは、エキストラ・アニェホ。

 

いずれも加水してアルコール度数38%〜40%で出荷されている。

 

透明のブランコでは、レポサドよりみずみずしい甘さを感じたので、これが樽貯蔵の影響がないアガヴェ本来の甘さなんだろう。もちろんプレミアムテキーラだからといって、ストレートで飲まなきゃいけないわけじゃない。ブランコをベースにしたマルガリータなんて最高だ。BAR蜜柑では、古典的なレシピのホワイトキュラソーの代わりに有機アガヴェシロップを使い、メキシコ産のライムを搾る。これぞL.A.セレブに人気の『オーガニック・マルガリータ』なのだ。

 


取材協力
BAR蜜柑(MIKAN)
住所:神奈川県茅ヶ崎市元町4-5
予約・お問い合わせ:0467-95-1251
定休日:木曜