日一日と深まりゆく秋。朝夕などは肌寒いほどの日もありますが、鹿児島では今、どこの焼酎蔵の中にも熱い湯気がもわもわと立ち込めています。蒸したサツマイモの甘〜い香りに満ちているんです。そう、この時期は芋焼酎の仕込みの真っ最中。8月下旬からはじまった原料芋の収穫に合わせて酒造りがスタートし、12月半ばまで続きます。

 

サツマイモは、収穫後、少し貯蔵した方が糖度が増す品種が多いのですが、芋焼酎の原料として最もよく使われるコガネセンガンは違います。傷みやすく、鮮度によって焼酎の味が大きく左右されます。だから、コガネセンガンを使った芋焼酎は、限られた時期にしか仕込むことができないのです。

そして、この秋いちばんに仕込んだ芋焼酎が、早くも蒸留のタイミングを迎えました。一般的に蒸留酒は、蒸留したのち一定期間熟成させてから出荷されますが、芋焼酎には蒸留したばかりの新酒を楽しむ歴史があります。蒸留したてという意味で、鹿児島では「煮たて」と呼ばれ、その独特の味わいが愉しまれてきました。

 

その年度初の酒造りが成功したことに感謝し、披露する意味もあるのでしょう。「今年もいい酒ができました。ありがとう」「熟成を経て、これからさらにいい味になりますよ。ごひいきに」。そんな思いを込めて、蔵元では新酒祭りを開催し、地域の方々や得意先を招いて、縁起のいい煮たてを振る舞ったりもします。

 

貯蔵熟成を重んじるワインにもボージョレ・ヌーヴォーがあるように、煮たてはまさに焼酎のヌーヴォーです。貯蔵すると徐々に深み、丸みのある味わいへと熟成されていくのですが、「煮たて」はやはりこの季節にしか味わえないという特別感が魅力でしょう。

 

各蔵から「煮たて」が出るのが10月下旬から11月初旬であることから、日本酒造組合中央会によって11月1日が「本格焼酎の日」に制定されています。また10月は「神無月」ともいうように、日本中の神様が出雲大社に集まって留守になってしまう月であり、11月1日は神様が鹿児島へお帰りになるめでたい日でもあるのです。

 

この本格焼酎の日に合わせて、例年、各地でさまざまな焼酎イベントが開催されてきました。昨年は、鹿児島一の繁華街・天文館に県内114の蔵元が集結して、3日連続で焼酎を提供する「焼酎ストリート」が出現。蔵元と焼酎トークを楽しんだり、ゲストによるライブやショーで大盛り上がり。同時に東京と大阪でも「鹿児島本格焼酎祭り」が開催され、たくさんの方が鹿児島の本格焼酎を楽しんでいました。

 

毎年、世界中のワインファンが、11月第3木曜日のヌーヴォー解禁日を楽しみにしているように。世界中のビールファンが、9月後半から10月にかけての16日間にミュンヘンを訪れるように。11月1日には、世界から大勢の人が鹿児島を訪れて、本格焼酎を楽しむようになったら素晴らしいだろうな…。そんなことを考えたりします。

 

でも今年は、イベントを開催することができません。鹿児島の蔵元では、例年通りに、おいしい芋焼酎の新酒ができつつあるのですが、本当に残念…。田苑酒造では、できたての芋焼酎をより美味しく味わっていただきたいとの思いから、昨年までとは製法もラベルも一新した『煮たて』がリリースされます。

その名も『DEN-EN nu:vó(煮たて)』。2020年の夏に収穫した新鮮なサツマイモを使用して、この秋いちばんに蒸留した黒麹原酒と白麹原酒の風味を最適にブレンドしました。新酒ならではのフレッシュな香ばしさとサツマイモの旨味。2020年だけの味わい。季節限定、完全数量限定の焼酎ヌーヴォー、解禁です。

 

海から、山から、里から、いろんな幸が届けられる日本の秋。おいしいごちそうと一緒に、水割りやロックで。肌寒い夜にはお湯割りで。焼酎ヌーヴォーを楽しみましょう!

 

季節限定、完全数量限定の焼酎ヌーヴォー『DEN-EN nu:vó(煮たて)』解禁!
https://item.rakuten.co.jp/denen-shuzo/c/0000000153/


<参考文献>
焼酎 一酔千楽 著/鮫島吉廣 発行/南方新社
鹿児島の本格焼酎 著/鹿児島県本格焼酎技術研究会 発行/春苑堂出版
いも焼酎の人々 著/大本幸子 発行/TaKaRa酒生活文化研究所