【 連載 】教えて!リカー先生 その④ 樽の中で熟成する麦焼酎とウイスキー

麦焼酎とウイスキーの原料が同じ二条大麦だということをリカー先生から教わったコージ君(26)。しかもスーパーのお酒売り場で見つけた金色の焼酎は、ウイスキーと同じ木の樽に入れて貯蔵されたものだと聞いて、がぜん興味がわいてきました。

 

コージ:リカー先生、きょうは樽貯蔵のことを教わりにきました。金色の焼酎は、ウイスキーと同じように樽に貯蔵してあるんでしたよね。

リカー先生:そうよ。あのきれいな金色は、樽から移った色なの。色だけでなく、樽の木のいろんな成分がお酒の中に溶け出しているから、香りや味も影響を受けているのよ。

 

コージ:どんな香りや味が特徴なんですか?

リカー先生:いちばんの特徴は、バニラやカラメルのような甘い香り。

コージ:それが木の香りなんですか?

リカー先生:樽材として最もよく使われるのは北米産のホワイトオークで、そのオーク樽に含まれる成分がバニラやカラメルのような香りになるのね。オーク樽は、日本語では樫(カシ)樽というのが通称なんだけど、でもじつはこれ誤訳で、オークは樫ではなく楢(ナラ)。だから正しくは楢樽ね。

コージ:えっ?そんな…誤訳って(笑)。

 

リカー先生:同じオーク樽でも、樽の内側を焼くか焼かないか、どの程度焼くか、新しい樽かそうでないかでもお酒への影響が変わってくるわ。

コージ:樽の内側って焼いてあるんですか?

リカー先生:火で焼くことで木の成分が溶け出しやすくなるの。でもその焼き加減にも軽くトーストする程度からまっ黒に焦がすのまであって、焼き加減でお酒の香味が変わるのよ。あと新しい樽ではなく、わざと中古樽を使ったり、他の種類のお酒の貯蔵に使った樽を使ったりすることもあるわ。

コージ:なんだか、すごいこだわりですね。

リカー先生:そう。でも樽貯蔵のおもしろいところは、結果を完璧に想定することができないところなの。樽貯蔵による結果は、今でも科学的に解明することが難しいのよ。

コージ:まだわかってないことがいっぱいある、みたいな?

リカー先生:そうね。まず、樽は木でできているでしょ。木は生き物だから1本1本個性がある。ということは樽もどれひとつ同じものはないので、当然、その中で熟成したお酒も樽ごとに違って、1本1本微妙に異なる性格になるの。

 

リカー先生:ところでコージ君、樽貯蔵って、どれくらいの期間貯蔵するか知ってる?

コージ:えー、3年ぐらいかな?

リカー先生:正解。スコッチ、アイリッシュ、カナディアンといったウイスキーは最低3年と定義されているわ。焼酎は蒸留後3〜6カ月の貯蔵を経て出荷されるものが多いけど、樽貯蔵焼酎は、そういうわけにはいかないの。ウイスキーと同じように3年、5年、もっと長く10年以上貯蔵されているものもあるのよ。

リカー先生:ウイスキーも焼酎も長期間樽貯蔵すると、その長い時間をかけてしか得られないまろやかさや深い味わいが生まれるの。それは、どんな科学技術をもってしても、人工的に短期間で造り出すことはできないものなのよ。

コージ:なんか、神がかってますね!

リカー先生:そうよ。人知を超えるって、まさにこういうこと。お酒が樽の中で長い眠りについて育つことから、樽はウイスキーや焼酎の「ゆりかご」って言われるわ。

 

リカー先生:長く貯蔵してお酒がおいしくなるのはいいことだけど、ひとつ困ることがあるよ。

コージ:困ること?なんですか?

リカー先生:お酒が減っちゃうの。

コージ:え、誰も飲んでないのに?

リカー先生:樽を通して自然に少しずつ蒸発するのよ。1年に3%程度と言われるけど、それでも3年貯蔵したら1割近く減ることになるでしょ。

コージ:なんかもったいない気がしますね。

リカー先生:でも、おいしいお酒を造るためにはしかたないの。だから蔵人たちは、この減った分のことをエンジェルズ・シェア=天使の分け前って呼んでいるのよ。

コージ:天使が飲んだのか!それならしかたないですね!(笑)

リカー先生:樽貯蔵麦焼酎とウイスキーを比べてみたけど、どうだった?

コージ:原料は同じ大麦で、麹菌を使うとか麦のおいしさを残して蒸留するとか違いがあって、貯蔵は両方ともオーク樽。似てるようで違うけど、樽貯蔵する点がいちばんの特徴のような気がするから、普通の透明な麦焼酎とはぜんぜん違うと思いました。

 

 

いままでに掲載された「教えて!リカー先生」シリーズは下記からご覧いただけます。

教えて!リカー先生① 麦焼酎の原料は麦。ではウイスキーの原料は? >

教えて!リカー先生② 麦焼酎とウイスキーの製造方法、どこが違う? >

教えて!リカー先生③ 麦焼酎とウイスキーの製造方法。蒸留の違い >