常にクリーンな心を持ち、自分を調律する。藤野さんの音楽と焼酎への上手な向き合い方

オペラ歌手として活動されている藤野沙優さんは、焼酎はもちろんお酒を好んで飲まれます。歌に使う「喉や体」にとって、「お酒」は一見良くないものと見られがちですが、藤野さんはどのように焼酎と上手く付き合っているのでしょうか?

今回は、藤野さんのオペラ歌手としての音楽への姿勢を通して、田苑酒造の音楽仕込みとの共通点、焼酎の印象や今に至るまでのお話をお伺いしました。

自分の体と心が楽器。自ら調律していくことがお酒と上手く付き合う方法

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私はオペラ歌手として活動をしています。元々、表現することが好きだったことから、小学校・中学校のときに合唱を始めました。その後、「オペラ座の怪人」を見てミュージカルに目覚めたり、有名なアニメの影響を受けたりして、クラシック音楽の世界の虜になっていきます。東京藝術大学を卒業してから音楽活動を始め、自身の演奏活動だけでなく、合唱指導、さらに演奏会の企画運営にも携わっています。

オペラ歌手は自分の体と心が楽器の役割をしているので、日頃から心を平静に保つことが大事です。そのため、焼酎も含めたお酒との付き合い方については考えます。私の場合はお酒の種類は問わずに飲む方ですが、本番1週間前には口にしませんし、飲んだ明くる日に歌うのも控えます。特に、高音を担当するコロラトゥーラ・ソプラノやテノールの方は、まるで精密機器のようにご自身を管理されているので、日頃から節制を徹底する方もいますね。

ですが、日頃から音楽に神経を尖らせている分、オフのときは思い切ってスイッチを切り替える方もいらっしゃるなど、オペラ歌手のお酒との付き合い方は人それぞれです。

例えば、ヴァイオリンやビオラだったら、楽器を客観的に見られますし、少しくらいは自分の調子が悪くても弾けてしまうものです。しかし、私たちオペラ歌手は、自分の心と体が楽器です。その「自分」という楽器を育てながら、その取扱説明書をどう作っていくか、そしていかに自分自身を調律し、いかに奏でていくかが、重要だと思います。

ルーツは九州。焼酎を飲むタイミングは自分の時間を特別にしたいとき

 

私の両親のルーツは九州地方出身です。父が佐賀県、母は熊本県にルーツを持ちながら、宮崎県と、田苑酒造がある鹿児島県で育ちました。

東京出身の私にとって、焼酎は大人のイメージがありました。里帰りのときに夜になると、伯父さんが「水みたいなのを飲んでいた」光景をよく思い出します。大人にならないと飲めないもの、だと思っていましたね。

20代前半はビールやカクテルを飲んでいたのですが、20代後半でも過ぎると気がついたら焼酎も飲んでいました。ビールや日本酒は誰かと酌み交わすことが多いですけど、焼酎は一人で落ち着きたい、クールダウンしたいときに飲むことにしています。自分の時間を特別にしたいなっていうときに、よく飲んでいます。

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20代後半の頃に、10日間ほど母と一緒に両親の実家のある九州地方を巡りました。
そのときに、私の祖父が昔、鹿児島県の知覧にあった飛行場で、特攻隊の若者たちを見送る責任者の役職に就いていたということでした。若者たちが戦地に赴くための知らせが届くと、近くの酒屋に行って焼酎の樽を買いに行き、最後の夜にみんなで共に語らい、杯を酌み交わしたと聞きます。

戦争が始まる前、祖父は優しい人だったそうです。けれど戦争が終わり、帰ってくると厳しい性格で無口な人になったとのことでした。夜になると、一人で焼酎を飲んでいたとも聞いています。その話を聞いたから、焼酎は一人で落ち着きたいときに飲みたいと思っているのかもしれません。もしかしたら。

実際に焼酎を最初に飲んだとき、「この味、好きだな」「馴染むな」と感じました。なんといいますか、日本酒だと口や鼻にふんわりと膨らむ感じですが、それと違って焼酎は潔くて凛としている感じ。一本、すっと芯が通っている印象がありました。

焼酎はたくさん種類があるので、それぞれ違いを楽しめるのも好きです。焼酎の中でも私は、芋焼酎は肝が座っていて、麦焼酎は繊細で、さらっとしていてクール、米焼酎はやさしいという感じを受けます。
私は焼酎に合った料理を作るのも好きです。音楽家として、食や体に取り入れるものは日頃から大切にしたいと考えています。食を通じて自分を調律していく。焼酎などのお酒、ご飯も音楽家としての心の栄養になっています。

共通点は振動。わたしは作曲家とお客様との間の通路でありたい

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田苑酒造の音楽仕込みには、私たち音楽家とも、共通する部分があると感じています。
例えば、ノートパソコンなどを使って音楽をかけるとき、それが私たちの指に伝わってくる振動は、曲や歌手、指揮者によって振動が違います。

「この振動は心地良いな」「これはなんかざわざわするな」など、無機質なパソコンからでも振動として伝わってくるのです。だから焼酎にも、音楽が振動となって良い働きをかけられるのだろうなと。焼酎も生きているのだろうなと思います。

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歌手としても歌をお客様に伝えるときは、自分のエゴを乗せた感情を歌に乗せて歌ってはいけないと思います。それは、お客様に対して嫌なものを拡散させることになります。常に心をクリーンにしないといけません。
やはり、人間が楽器になるので、私という人柄すべてが歌としてお客様に伝わってしまう。本当にそれは誤魔化せません。

私は「歌を届けたい」といった「〇〇したい」という表現は、人への押し付けになるのではと思っています。作曲家とお客さんを繋ぐ通路でありたい。ですから、日々、自分の機能のアップデートに努めています。

常に自分を穏やかに保ちたい、心をニュートラルにしていたいですね。例えば、手帳で1日を振り返るとか、お風呂にゆっくり入るとか、本当に小さなことを大事にしていくことが、大事なんです。自分の好きなことを、小さくてもいいから探しだして、積み重ねていくこと。それはこれからも大切にしていきます。