焼酎だけじゃない!実は深い音楽熟成の世界

ワインでも音楽熟成はできる?

007
▲信濃ワインの熟成庫。天井に設置されたスピーカーから響くクラシック音楽が木樽のなかのワインに伝わっている

 

田苑は、1991年からクラシック音楽を聴かせて焼酎を仕込み、まろやかな味わいに仕上げています。こうした方法は「音楽仕込み」「音楽熟成」と呼ばれるもの。聞きなれないかもしれませんが、実は20年以上前からさまざまなジャンルで展開されているのです。

長野県塩尻市にある「信濃ワイン」は、1916年に銘醸地で知られる信州桔梗が原でブドウ栽培を始めた歴史あるワイナリー。1992年から音楽熟成を取り入れています。その方法は、8時から17時までワイン造りを行う工場と熟成庫でクラシック音楽を流すというもの。どんなメカニズムでおいしくなるのでしょうか?

「ワインは単純にいうと約10%のアルコールと約90%の水分でできています。この中にはいろいろな成分があって、一見、混じりあっているようですが、できたての頃は隣り合っているだけ。ところが、音楽で振動を与えることによって分子レベルで混じり合うんです。ワインは熟成するとタンニン(渋み成分)が落ち着き、とげとげしさがなくなりますが、音楽熟成にはこれと似たような働きがあります」と教えてくれたのは、4代目社長の塩原悟文さん。

祖父や父から継いだワイン造りに新たな試みを取り入れようと音楽熟成を始めた張本人です。実際、音楽熟成したものとしてないもので味比べをしたこともあったとか。

「音楽を聴かせたものとそうでないものは比べればわかります。まろやかさが増して、全体のバランスが良くなるんです。ブドウが発酵してできるワインは生き物。口があれば、“気持ちいい~”と言っているんだと思いますよ」

ワインも焼酎と同じ液体物。音楽で伝わる振動が成分どうしの結びつきを高め、まろやかさを増すんですね。

 

味噌もバナナも! 液体じゃなくても音楽熟成は成り立つ?

みそや 樽
▲佐々長醸造のクラシック音楽発酵味噌蔵。40樽が置かれた386㎡もの味噌蔵には8つのスピーカーが設置され、ベートーベンの「田園」が響きわたっている。

 

しかし、音楽熟成は焼酎やワインに留まらないという情報をキャッチ。味噌やバナナで行っている会社があるとか。液体以外でも音楽熟成は可能なのでしょうか?

教えてくれたのは、岩手県花巻市にある佐々長醸造・営業課長の佐々木洋平さん。佐々長醸造は1906年に創業し、味噌や醤油づくりをしてきた老舗の会社。20年以上前から「クラシック発酵味噌田園」などの主力商品で、ベートーベンの田園を聴かせた音楽熟成を行っているそう。

「当社の製品はすべて生味噌ですので、酵母が生きている状態。スピーカーからくる振動が木樽に伝わって、その酵母が活性化するのだと思います。実際に、音楽熟成をすると発酵が早まり、旨みと香りが強く出ましたね。当社の研究室や開発室のスタッフが全国の味噌品評会と同じ方法で官能検査をやりましたが、10人全員がそれを確認しました」

なるほど! 考えてみると、焼酎もワインも発酵に関わるもの。そうなると、生鮮食品であるバナナを音楽熟成する理由が気になるところ。

このギモンを解決してくれたのは、宮崎県都城市で「ミュージックバナナ」を熟成販売している都城大同青果の永田共孝会長。2007年に差圧式という均一にバナナが熟成できる加工方法に切り替えたのを機に音楽熟成を導入しています。

「私どもが聴かせているモーツアルトの楽曲は8000ヘルツの高周波音を出しています。波動はどんな環境でも変わらず伝わるもの。植物の細胞にもそれが伝わって刺激されるのだと思います。念のため4日間の糖度検査を行ったところ、その時は平均0.4度糖度が高くなり、甘味が強くなることがわかりました」

実際に糖度が上がるという結果が出るとは! 音楽は発酵食品・飲料だけでなく、青果にも効果を発揮することが実証されていたんです。

 

産学共同研究へ。可能性が広がる音楽熟成

pixta_12104218_S

話を聞けば聞くほど広がりをみせる音楽熟成。さらなる可能性を探るために話を聞いたのは、日本音楽熟成協会の常務理事の木村和範さん。

「音楽熟成は飲料や食品だけでなく人間など動植物全般に効果があります。人間の場合は、音楽を聴くとクロモグラニンという疲労物質が減り、ストレスが緩和されるのです。そのため、職場の環境改善や工場の作業効率アップのために利用されています。最近では具体的なバックデータをとろうと、鳥取大学の医学部と連携した産学共同研究をすすめているんですよ」

音楽熟成が登場したのは1990年頃。25年以上の時を経て、さまざまなジャンルで効果があることがわかり、きちんとした根拠を探る段階にきているということ。それをもとに、今後、ますますいろいろな分野で活用されることが期待できそうです。

 

■取材協力
信濃ワイン
http://www.sinanowine.co.jp/

佐々長醸造
http://www.sasachou.co.jp/

都城大同青果
0986-25-3388

日本音楽熟成協会
http://onjyuku.com/

関連キーワード

この記事をシェアする

最新のキャンペーン情報など配信中♪