新潟出身の女子大生も味わう。お水やお米、食材そのものの質の表現者である焼酎の魅力とは
2016/04/15
いつの頃からだろう? 父とあまり話さなくなったのは。
公園でボール投げをした。自転車に乗れるようになるまで教えてくれた。夏休みの工作を手伝ってくれた。いつも手をつないで歩いた。そして、父が撮ったビデオの真ん中には、いつも私がいた。あの頃は、世界で一番「パパ」が好きだった。
でもいつからか、父と話さなくなっていった。お風呂あがりに下着で歩く姿や、電気カミソリでヒゲを剃ってるところとか、見るのもイヤで。だんだん避けるようになって、話さなくなると、そのうち何を話していいのかもわからなくなっていった。
高校生だったある日、会社帰りにお酒を飲んだ父が、おみやげを買ってきた。「まゆの大好きなお寿司だよー」と差し出す手を、私は押し戻すように席を立ち、「臭いから近づかないで!」と言って、自分の部屋へ入ってしまったのだ。
やりすぎたのはわかっていた。謝りに戻らなきゃと思った。
でも私は、素直になれなかった。
大学進学が決まり、上京してひとり暮らしをはじめ、そのまま東京で就職した。あれ以来、父は変によそよそしくて、お正月に帰省しても、話すことは「仕事うまくいってるか?」と聞かれて「まあ」と応える程度だ。
定年に近い父は、お酒を飲みながら柔和な顔でうなずくばかりで、それ以上何も話そうとはしなかった。私は自分もお酒を飲むようになったので、父がお酒を飲んでいてもぜんぜん平気になってたんだけど。でも「いっしょに飲もう」とは言い出せなかった。
去年の秋、両親に彼を紹介した。緊張している彼にばかり気を取られて、父がどんな顔をしていたのか覚えていない。そして、この春、結婚式を挙げた。
控え室で母から、父がこの日のためにジョギングしていたことを聞いた。母には、健康のためだと言っていたらしいけど、「まゆをかっこよくエスコートして送り出したかったんじゃない」と母は笑った。
チャペルの大きな扉が開き、父とヴァージンロードを歩みはじめると、その一歩一歩にたぐり寄せられるように、父との思い出がよみがえってきて、涙が滲んだ。そしてバトンタッチ。父が私の手を雅史さんに預けながら、泣きそうな声で「娘をよろしくお願いします」と言ったのを聞いた瞬間、私はボロボロと涙をこぼしていた。
世界で一番好きだったパパ。口をきかなくても離れていても、いつもそばにいてくれたんだね。世界で一番私を愛してくれていたんだね。
私にとっては、今年がはじめての「父の日」だ。
今まで、ごめんね。そして、ありがとう。今度いっしょに飲もうね!
父の日には特別な麦焼酎を。
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