鹿児島の金柑はとても甘くて爽やかだった /金柑生産者を訪ねて

ビニールハウスに入ると、ほんわかとした空気に包まれた。さすがの鹿児島も12月の平均気温は10℃あまりで、外では厚手のコートやダウンが必須なのだけど、ハウスの中は春らんまんの暖かさで、花のような甘くて清々しい香りが漂っていた。

鹿児島県薩摩川内(せんだい)市入来(いりき)町。田苑酒造の本社がある同市樋脇町から車で15分ほどのこの地域で生産される金柑は、「川薩(せんさつ)地区のハウスきんかん」として「かごしまブランド」に指定されるほど品質が高いという。

この薩摩川内の金柑を使って、田苑から『金柑こみち』というお酒が出るというので、高品質な金柑とは、どういうものなのか。それを直接確かめてみようと、金柑づくり25年の高嶺弥兵衛(たかみね やへい)さんの農園へやって来たのである。

「みなさんよく金柑は酸っぱくて、皮だけ食べるとか、甘露煮にするとか、そういうイメージを持たれるのですが、ぜんぜん違います。ハウス金柑は、糖度が乗っていて、甘く、そのまま丸ごと食べられます」という高嶺さんに案内してもらってビニールハウスの中を進んだ。

 

濃い緑の葉の間に、コロコロとした丸い実がたくさんなっていた。が、アタマの片隅にあった金柑とはずいぶん様子が違う。記憶の中の金柑は、民家の庭先にある木に黄色の小さい実が鈴なりで、一種の庭木のようなものなのだけど、ハウスの中の金柑は、記憶の中の金柑の倍くらい大きくて、実の大きさも均一で、しかも黄色ではなくオレンジ色なのだった。

 

「今まだ収穫がはじまったばかりです。実の色がオレンジ色になって、ヘタに近い部分が紅色がかったものを収穫します。最盛期は1月半ばからですので、これから1カ月、もっと大きくなって熟していきます」と高嶺さん。なーるほど。高品質の金柑というのは、もう大きさや色からして違うのか! 高嶺さんが生産する金柑はハウス3棟、面積にして約1反(10a)、約3トンの収穫量がある。

せっかく調べてきたんだから書いておくと、『金柑は、ミカン科キンカン属の木になる果実である。柑橘類にはみかんやオレンジ、はっさく、ポンカン、レモン、グレープフルーツ…と多くの種類があるが、金柑はじつは柑橘属ではなく、独自の金柑属という分類になる』。へぇ〜〜でしょ。

 

どうしたら、こんなに大きな金柑になるのか、高嶺さんに聞いた。

「金柑は6月10日頃から花が咲いて、一番花が落ちても、二番三番と、年に数回花が咲きます。放っておくと、ものすごくたくさんの実がなりますが、そのぶん実は小さいんです。それを大きくするために「摘果」します。ひと枝に2、3個程度に」。

摘果とは、実が成長する前に摘んで数を減らすこと。キズのあるものや小さすぎるものを取り除いて、いい実だけを残して大きく育てるのだ。

 

出荷される実のサイズはMから4Lまで5階級に分かれている。鹿児島県の「ハウスきんかん出荷基準表」によると、直径2.6〜2.8cmがMサイズ、3.2〜3.6cmが2Lだ。高嶺さんが作る金柑は、大きくて形がきれいなことで生産者の間でも有名で、4L(3.8cm以上)にもなる。

ハウスの中をひと回りしたところで、「食べてみますか」と十分に色が乗った金柑を差し出された。待ってましたとばかりに、そのまま皮ごとかじりつく。甘い。本当に甘い。甘いとは聞いていたが、これほど甘いとは思っていなかった。

糖度14度以上でなければ出荷できないという規制があるらしいが、高嶺さんちの金柑が完熟すると、糖度16度以上にもなるという。ちなみに温州みかんは約12〜13度、いちごは約15度。それ以上ってことだ。

 

皮は薄くてやわらかく、果汁たっぷりで、口の中いっぱいに甘みと特徴のある香りが広がった。ほんのちょっと苦みもあるが、それも金柑ならではの風味で爽やかだ。薩摩川内で生産される金柑は、そのほとんどが生食用で出荷される。昼夜の寒暖差が大きいなど、この土地の気候や風土も金柑を甘くする要因だという。

 

大きくて甘い金柑を作るには、木自体を元気にすることが大切だという。果樹は接ぎ木によって改良したり、繁殖させるのが一般的で、高嶺さんの金柑の木に新しい穂(新芽)が出ると、それを業者さんが買い付けに来るのだそう。大きな実のなる木の穂を、別の台木に接ぎ木することで、大きな実がなるDNAを受け継いだ苗を作ることができるからだ。

 

「金柑の木にもいろいろあって、品種は同じでも大きな実がなる木があります。それを毎年毎年ていねいに剪定して丈夫に育て、温度管理して摘果して水管理して、丹精込めてやると4Lの実をつけるまでになるんです」と高嶺さん。大きくて甘くておいしい金柑は、まさに高嶺さんの情熱の結実なのだ。

 

 

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