靴が”馴染む”ではなく”自分の一部”になる。22歳の靴職人が語るエイジングの魅力

今回は、浅草の靴工房「shoedesign&shoemaking  When」代表の小林晃太さんにお話を聞きました。

田苑酒造の長期貯蔵にも通ずる靴の経年変化ならではの「味」、年月を重ねることでしか生まれない親子の物語。靴づくりの視点からエイジングの魅力にせまっていきます!

 

「運命の一足」との出会い


僕が靴づくり志したのは、高校生の時「運命の一足」に出会ったからでした。

長野県須坂市に老舗の服屋があるんですよ。そこの店長さんがやり手のバイヤーの方で、県外から来るお客さんも多いんです。
そこのお店で出会ったのが、運命の一足でした。黒い革製の靴で、見た瞬間にビビっときて。

高校生の時は造園の勉強をしてたので、卒業後は庭造りの道に進もうとしていたのですが、靴の魅力に一気に惹かれました。

店長にその靴について聞き、浅草のデザイナーの方が作っていると聞いたので、その人に会いに行ったんです。
卒業後はそのデザイナーの方が通っていた、浅草の靴学校に入学しました。

そこで靴づくりについて一から勉強を積んでいきました。ですが、卒業制作の際に思いきったことをやりすぎて卒業不認定になってしまったんです。
そこから燃え尽き症候群になってしまい、しばらくだらだらとした生活を過ごしていました。

2015年の9月から現在のブランドは立ち上げたのですが、精力的に活動していたとは言えませんでした。
その状況を見て経営者である父が、活動をするきっかけにと、経営者の方が集まる会合に呼んでくれたんです。

父は20歳の時に起業していたので、自分も20歳の時に独立したいと漠然と思っていたのですが、
その会合で様々な方のお話しを伺い、この場で靴職人であることを宣言して、やるしかないという強い思いに変わりました。
そこから本格的に靴職人として踏み出し、去年の11月から現在の靴工房を構えました。

 

年月が経つことで靴が「自分の一部」になる


もともと、革が経年変化していくのが好きだったんですよ。
身に着けるにつれて、自分のものになっていく感覚。運命の一足を見た時も、良い味をだしてくれそうだな、という想像がありました。

また、エイジングとボロくなることは違うんです。それは経年変化ではなく、経年劣化。
靴の中底は、人の背骨にあたる基盤の部分なのですが、そこが自分の指や足の形にフィットしていきます。
馴染むというよりも、自分の一部になっていく。その感覚が靴のエイジングの魅力ですね。

 

昔の職人は、靴に焼酎を吹きかける。


靴を製作していく時に、革を木型に合わせていくのですが、硬い革だと動きが出ないんです。そこで昔の靴職人は焼酎を革に吹きかけて、革を柔らかくしていたようです。
今は水を使って柔らかくするのが一般的なのですが、焼酎を使う方法もトライしてみたいですね。

 

「靴づくり」「靴のお手入れ」の文化を育てていきたい。

これまでの靴づくりの本場は、イギリスやフランス、イタリアで、日本人もたくさん修行に行っていたんです。でも最近は状況が変わってきていて。海外から日本に修行に来る人はまだ少ないのですが、海外から靴をオーダーしに来る方は増えているんです。
技術だけで言えば日本は卓越したものをもっているので、海外のマネごとではない、日本の靴作りの文化を育てていきたい考えています。何でもそうですが、海外に負けるのは悔しいじゃないですか。

また、現代の人は毎日靴を履いているのに、靴の知識がほとんどないんです。
靴づくりだけではなく、持ちや履き心地が良い状態が続くよう靴のお手入れの文化も育てていきたいですね。

 

エイジングにより、人としての厚みが変わる


長期貯蔵酒の基準は、3年以上の時間をかけて熟成した焼酎が50%以上含まれる商品と伺いました。
また、商品によっては10年貯蔵の原酒を使うと聞きます。
田苑酒造さんの長期貯蔵へのこだわりや独自の製法を含め唯一無二の存在へ育て上げている
「田苑・エイジングスピリッツ」と同じように、靴が製品になるのも、歳月やこだわりの結果なんです。

牛の皮が革になっていき、その革が何年も浸かって、靴の原材料として使われていく。これも一つのエイジングですよね。
時間をかけてできた靴が、お客さんのもとに渡り、更に歳月を重ねていきその人にとっての
唯一無二の靴に育っていきます。。

海外のホテルだと、お客さんの人となりを判断する一つの基準として、靴を見るそうです。靴をどれだけ気にかけ、どんな風に履いてきたかが、人間性とし表れるんです。
長期貯蔵によって味が変化していくように
靴を大切に扱いエイジングさせていくことで、印象や人間としての厚みも変わってくるのではないのでしょうか。

 

年月を重ねることで生まれる物語


靴を注文して頂いたお客さんの中に、高いお金を払ったから部屋に飾っておくと言う人もいらっしゃるのですが、僕の気持ちとしては、どんどん履いてほしいです。

作りたての靴は「製品」の段階です。しかし履き続けていくことで本当の意味で自分のものになっていきます。
たくさん履いて、お手入れしてもらい、ボロくなって破けたら僕の所に修理に持ってきてもらって、という作業を早くやりたいですね。

また、オーダー靴はお客さんと共に育っていくものです。それを象徴する一つのエピソードがありました。
ある有名な靴職人の方のところに、一人のお客さんが訪ねてきて「父の靴を履きたい」と頼まれました。そのお客さんの父親は亡くなってしまい、父が愛用していた靴を持ってきたのです。

その靴職人の方はお父さんの靴を一度バラして、継ぎ接ぎし、子供の方の足にオーダーし直していき、靴をつくり替えました。
この話を聞き靴職人という仕事は、単純に凄いと、いい仕事だなと感じました。

僕自身も、お客さんに長く使ってもらい、時代は違えども同じ時を歩め受け継がれてくいくような靴を作っていきたいと思います。