金ラベルを支える炎の樽職人たち

樽貯蔵(2)

北米の匂いがする製樽工場

宮崎市から北へ約30km。日向灘に面した宮崎県都農町の一画に、その製樽工場はあった。ARIAKE Barrel ── 京都に本社がある有明産業(株)の都農工場だ。あたりには日本らしい農村風景が広がる中で、この工場だけ、なにやら違った雰囲気を放っている。外観だけを見れば、北米のどこかの山の中にあってもおかしくない。

有明産業が洋樽の製造をはじめたのは1984年から。歴史は古くないが、他の企業が技術や事業の継承につまずく中で、樽職人から樽職人へと技能を受け継いできた。そして現在、日本で洋樽の製造販売を専従で行っているのはここ1社しかないのだという。

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工場に足を踏み入れると、電動ノコギリやカンナなどの切削音に包まれた。木材の清々しい香りを何倍にも濃縮させたような、密度たっぷりの木の匂いが充満している。この工場では、北米産のホワイトオーク樽450ℓサイズを中心に、1カ月あたり約200本を製造していると聞いていたのだが、工場内にはベルトコンベアの製樽ラインというようなものはなかった。あるのは、大小の木工機械とタガをはめるプレス機ぐらい。つまり、製造工程のほとんどは手作業で行われているのだった。

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伝承の技に、樽造りの美学をみた

木を材料に、1滴の焼酎も漏れることのない、重さ100kgになる樽を造る。それは、緻密さと大胆さの両方が必要な作業で、コンマ1ミリにこだわる繊細な神経と、それこそ樽のような腕をした強靭な肉体、そのどちらもが必要なように思う。

でも、働いている樽職人さんたちは、みなさんおだやかで、いい笑顔で、そんなに繊細でも強靭でもないように見えた。ところが実際の作業を見せていただくと、ビックリすることの連続だった。いちばん驚いたのは、『焼煙加工』というオーク樽の内側を焼き燻す、樽造りで最も重要な工程だ。

組み立てたオーク樽の胴の部分を火元にかぶせ、その中にオークのおが屑を放り込む。すると「ボォーン!」という爆発音がして、いきなり大きな炎が燃え上がった。あまりの勢いに、思わず身を引いてしまう。が、職人さんは噴き上がる炎にビクともしないで、樽をどぉーんと横倒しにし、さらにはゴロゴロと転がして樽の中に炎を回し、内側全体を均一に焦がしていく。

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作業場の温度が上がり、焦げた匂いが漂った。この作業にバーナーを用いるところもあるようだが、有明産業では高々と炎を燃え上がらせてダイナミックに加工する。炭のようになるまで焦がしたり(チャーリング)、狐色になるまで炙ったり(トースト)、焼き加減で焼酎に与える影響が変わるのだという。一気に焼き上がるため、焼き色の判断が難しく、樽職人の技と勘の見せどころだ。

この焼煙加工により、オーク材の成分が分解され、焼酎の中に引き出しやすくなる。こうして、田苑 金ラベルやゴールドの唯一無二の美味しさが生まれるわけだ。