「贅沢ではない、豊かな朝食」を提唱しつ づけてきた上澤さんの「晩の酒の肴」

「炊きたてのあったかいご飯と、具だくさんの味噌汁、漬物。これが基本です。そこに、常備菜や夕べの残りもんや生野菜なんかが小鉢でちょこちょこっと並ぶというのが、うちの朝食スタイルです」

そう話すのは、上澤卓哉さん。日光の地で江戸時代より味噌・醤油の醸造をつづけてきた上澤家の主であり、たまり漬を主力商品とした上澤梅太郎商店の店主です。

 

朝ごはん、ちゃんと食べてますか?

朝はみんな忙しいから、食べないことに慣れてしまって、いつも朝食抜きという人もいるのでは?でも上澤さんは、朝メシ抜きでは仕事ができない。そして、どんなに忙しくても自宅にいる限りは絶対に和食だと言います。

上澤梅太郎商店のウェブサイトに、店主日記というブログがあり、そこには上澤さんが当日食べた朝食メニューが写真とともに紹介されています。2001年からほぼ毎日欠かさず綴られているので、17年分の朝食を見ることができます。抜粋して紹介しましょう。

 

■2017年7月2日

納豆、昆布と豚肉の沖縄風炒め、トマトのソテーを添えた目玉焼き、たまり漬「おばあちゃんのホロホロふりかけ」、明太子、大根のぬか漬け、メシ、揚げ湯波とトマトとピーマンの味噌汁

 

■2017年4月30日

蕗のおひたし、胡瓜のたまり浅漬け、納豆、飛竜頭と芥子菜の淡味炊き、独活と人参のきんぴら、きゅうりのたまり漬、らっきょうのたまり漬、メシ、シジミとトマトと三つ葉の味噌汁

 

■2017年1月27日

ほうれん草のおひたし、納豆、トマトのスクランブルドエッグ、鰯の梅煮、ひじきと人参と揚げ湯波の甘辛煮、すぐき、メシ、白菜とベーコンの味噌汁

 

■2016年10月31日

牛蒡と人参と鶏挽き肉の炒りつけ、揚げ湯波とひじきと人参の甘辛煮、豆腐の卵とじ、納豆、じゃこ、メシ、豆腐と若布と三つ葉の味噌汁

 

■2016年6月30日

セロリのサラダ、茄子と豚挽き肉の炒りつけ、ジャガイモと玉葱のサラダ、たまり漬「おばあちゃんのホロホロふりかけ」、納豆、メシ、オクラとズッキーニの味噌汁

 

上澤家の朝食は、一汁三菜が基本

驚くべきは、やはり品数の多さですよね。朝からこんなに5つも6つも器が並ぶなんて、まるで旅館に泊まっているかのよう。さぞや手間も時間もかかっているのだろうと思いきや、朝食を準備されるのは”おかみ”の上澤りえさんで、忙しいからパパッと10分程度で準備されるのだそう。

 

コツは、時間のあるときに常備菜を作り置きしておくことと、前日の残りなども上手に使うこと。そうしたら、朝はあたたかいご飯と、味噌汁さえ作れば、あとは「あるもの」を並べるだけで大丈夫なのだとか。ひとりずつ小鉢に盛りつけてあるのもきれいで、なんだか食欲をそそられませんか?

 

上澤家の味噌汁の具は、相当変わっているようです。具だくさんなのはいつものことですが、トマトやピーマンが入っていたり、アスパラの天ぷらが入っていたり。日光の特産品に、ゆばを巻いて油で揚げた揚巻湯波というものがあるのですが、それよりもやや大衆的な、一口大にカットされた平たい揚げ湯波は、特によく使います。定番の具材にこだわらず、その時期に出まわる旬の野菜などを使って“冒険”するのだとか。

 

長男の佑基さんは学生時代、上澤家へ遊びに来た友人に「キミんちの食生活は特殊だね」と言われたことがあるそうです。おそらくそれは味噌汁の具だけを指して言われたのではないでしょう。一汁三菜のきちんとした食事を毎朝食べ、その汁もおかずも毎朝献立が違う。そんな食事をしている家庭が、今どれだけあることでしょう?!

 

質素だけど、普通だけど、そこが大事

上澤さんは、おっしゃいます。

「僕にとっては、まったく普通のことなんです。昔から朝はこうでした。家族揃って、食卓を囲んで。食べているものもごく普通で、この土地で昔から食べられていたものとか、近所の農家さんからいただく野菜とか、変わったものはありません。」

 

「今、日本では和洋中さまざまな食材が手に入りますよね。しかも時期を問わず、夏でも大根が、冬でもトマトがというふうに一年を通して。選択肢はものすごく増えました。でもそれで、食は豊かになったのでしょうか?」

 

「和食は本当に多彩かつ多才です。塩、醤油、味噌があり、出汁をとり、酢や砂糖も使います。生で食べたり、茹でて和えて、煮て、焼いて、炒めて、油で揚げて。発酵させるという技もあります。ありきたりの食材でも、ほんの少しの工夫によって、炊きたてのご飯に合うおかずになります。そこには、どんなに食べても飽きることのないおいしさがあるはずです。」

 

ご飯に合うおかずは、酒の肴にもいい

「炊きたてのご飯に合うおかずは、晩の酒の肴にもいいんですよ。池田弥三郎という国文学者が『私の食物誌』(河出書房新社、1965)というエッセイの中にも書いているのですが、「一体、朝の食膳にのぼせて、あったかいご飯でたべておいしいものは、同時に、酒の肴にしてもいいものが多い」。これは、けだし名言だと思います。
僕は田苑シルバーが好きで、行きつけの焼肉屋でボトルを入れてるほどなんですが、あの爽やかでスッキリした味と、うちの朝めしのおかずは本当によく合いますね。煮物も焼き物も揚げ物も、もちろん上澤のたまり漬も(笑)」
そう言われてもう一度「上澤家の朝食」の写真を見ると、なるほど、ご飯に代えて田苑シルバーのロックかソーダ割りを並べたら、さぞや酒が進むことでしょうな。

日光味噌のたまり漬 上澤梅太郎商店
http://www.tamarizuke.co.jp/