田苑の芋焼酎になるイモの生産者を訪ねました
2017/03/13
音楽仕込み(2)
開発はどのように進んだのですか?
「タンクに直接スピーカーを付けて音楽を聴かせても、目立った効果が得られなくてね。そうしたある日、音楽部の後輩に会って話をしていたら、彼は元高校の教師で、生徒たちの精神面のケアに音楽療法というものを取り入れていたという話になった。それが、耳から音を聞かせるだけじゃなくて、体全体に振動として伝えることで効果を高めるというものだったんですよ」
体感音響ですね!
「話を聞いたとたん、『これだ!』と、ひらめきましたよ」
「昔、清酒を灘から江戸へ運ぶ時に『富士見酒』というのがあってね、富士を見てきた酒という意味で、船で長く揺られてきた酒はおいしいと言われました。だから焼酎に振動を与えることは、熟成にはいいだろうと直感したんですよ」
元々は、音響メーカーが開発した体感音響と呼ばれる技術で、トランスデューサという特殊なスピーカーによって、音楽の信号を振動に変換して伝えるものだ。
この技術を使えば、焼酎に音楽を聴かせることができる。クラシックを聴かせながら、世界のどこにもない酒を造ることができる。そう考えた塚田さんが提案し、1991年、田苑酒造の『音楽仕込み』ははじまった。
工場では、もろみの一次仕込みタンクと蒸留後の貯蔵タンクに、たくさんのトランスデューサが取り付けられていた。現在、1,000個以上が稼働しているという。一次仕込みではもろみの発酵を促し、貯蔵時には熟成の効果を高めるのが目的だ。田苑酒造の麦焼酎のすべてが、この『音楽仕込み』によって造られている。
トランスデューサに触れてみると、ブルブルと小刻みに振えていた。スピーカーから工場内に流れている音楽に呼応して、振動している。音楽が振動に変換されて、焼酎に働きかけているのだ。曲目は田園交響曲ほかクラシックの名曲30曲以上で構成され、全曲7時間20分。これが繰り返し、再生されている。
『音楽仕込み』された焼酎は、まろやかで、舌の上にやわらかな感触が広がるという。田苑酒造では、これを『品格』と呼んでいる。
なぜ、まろやかになるのか。製造部の岩元さんが説明してくれた。
「貯蔵前、原酒を25度に割水したばかりの焼酎は、アルコール分子と水分子がそれぞれの集団を形成しています。そこに音楽の刺激が加わると、アルコール分子も水分子も集団が壊れて小さくなり、アルコール分子が水分子の塊の隙間に入り込むカタチになります。アルコール分子のまわりを水分子がやさしく包み込んでいるような状態です」
だから、アルコールの刺激を感じない、まろやかな焼酎になるというわけだ。塚田さんが後輩から話を聞いた時に直感したことは、こういうことだったのだ。
など30曲目以上の曲が焼酎作りに使われている。
Kura Master 2021 プラチナ&審査員賞、TWSC 2020最高金賞、LAISC金賞受賞。琥珀色の輝きの中に立ち上がる柑橘系の華やかな香り。全量3年貯蔵酒ならではのまろやかさ。原料の特性とオーク樽に由来する甘さが絶妙にマッチして、フルーティな味わいを醸し出す。そして、じわりと広がって深く余韻を残すのは、他に類をみない、はじめての味。
ENVELHECIDA(エンヴェレシーダ)とはポルトガル語で“貯蔵”を意味します。
【日本百貨店協会会長賞受賞】クラシックの名曲をモチーフに、5つの香りと味、ボトルやパッケージまでトータルにデザインされた、音楽仕込の田苑ならではの全く新しい焼酎セット。りんご、なし、メロン、バナナ、マスカット…フルーティな香りを生みだしたのは、ワイン酵母と清酒酵母。焼酎造りでは考えられない方法を試行錯誤した末に、この、甘く、華やかに香り立つ新しいお酒ができました。音楽好きの方や、女性におすすめの飲み比べセットです。
詳しく見るオーク樽の中でゆっくりと時間をかけて熟成した原酒は、かつてないまろやかさと深い味わいを醸しました。全量3年貯蔵、樽貯蔵、音楽仕込みといった田苑酒造の技と粋を惜しみなく注ぎ込んだのが、この田苑 ゴールド。バニラのような香り、重厚で力強さがありながらも、まろやかさがあり、飲んだ後もしばらく余韻が続く、深い味わい。樽貯蔵ならではの黄金色の輝きも、エイジングスピリッツの頂を目指した証しです。
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